選ぶ前に決めておく3つの条件
デスクトップ環境(DE)は、画面のパネル、ウィンドウの操作、設定画面などをまとめたソフトウェア群です。同じディストリビューションでも、DEを変えると見た目も使い勝手も大きく変わります。
選ぶときに効く条件は3つです。1つ目はPCのスペックで、特にメモリ容量が影響します。2つ目はWindowsから乗り換えるかどうかです。乗り換えなら、操作の慣れが続けやすさを左右します。3つ目は、設定を自分でどこまで変えたいかです。大まかには、メモリが少なければXfce、Windowsに近い操作を求めるならCinnamonかKDE Plasma、細かく作り込みたいならKDE Plasma、決められた操作に合わせてすっきり使いたいならGNOMEが候補になります。以下で、その理由を観点ごとに説明します。
5つの観点で並べた比較表
| 観点 | GNOME | KDE Plasma | Xfce | Cinnamon |
|---|---|---|---|---|
| 起動直後のメモリ(目安) | 多め | 中程度 | 少ない | 中程度 |
| 操作感 | 独自(アクティビティ画面中心) | Windowsに近い | 昔ながらのパネル型 | Windowsに近い |
| カスタマイズ性 | 標準では低い(拡張機能で補う) | 非常に高い | 高い | 中〜高 |
| Wayland対応(執筆時点) | Wayland中心 | Waylandが標準 | 移行途中 | 実験的 |
| 標準アプリ | 充実・統一感あり | 非常に充実 | 最小限 | Linux Mintでは充実 |
メモリ量はディストリビューション、バージョン、自動起動するサービスによって大きく変わるため、あえて数値ではなく相対的な目安にしています。自分の環境で確かめるには、ログイン直後に端末で free -h を実行し、used(使用中)の値を見ます。
メモリ使用量と動作の軽さ
4つの中で一番軽いのはXfceです。画面効果が控えめで、メモリ4GB程度の古いPCでも動きやすくなっています。GNOMEは比較的重めです。アニメーションや検索のための索引作成(ファイルを検索しやすくするためのデータ作り)が裏で動くので、メモリ4GBだとブラウザと一緒に使うときに苦しくなります。KDE Plasmaは機能の多さのわりに軽く、Plasma 5以降で消費量が抑えられてきました。Cinnamonはその中間です。
メモリ8GB以上のPCなら、どれを選んでも日常の作業で差を感じる場面は少なくなります。軽さを最優先する必要があるのは、メモリが少ないPCか古いCPUを使う場合です。
操作感:Windowsとの近さ
CinnamonとKDE Plasmaは、画面下にタスクバーがあり、左下にスタートメニューに当たるメニューがある構成が標準です。Windowsから移る人でも、ほぼ迷わずに使い始められます。Xfceもパネルとメニューを使う構成で、見た目はやや古風ですが、操作の考え方は同じです。
GNOMEは考え方が違います。画面左上の「アクティビティ」かSuperキー(Windowsキー)でアプリ一覧とウィンドウ一覧を開き、そこから検索して起動します。タスクバーはありません。ウィンドウの最小化ボタンも標準では出ません。慣れるとキーボード中心で素早く操作できます。一方で、Windowsの癖が残っているうちは戸惑います。なお、UbuntuのGNOMEは独自にドック(アプリを並べたバー)を加えていて、素のGNOMEとは見た目が異なります。これはディストリビューション側の変更です。
カスタマイズ性
KDE Plasmaは、パネルの位置や数、ウィジェット、ショートカット、ウィンドウの動きまで、ほぼすべてを標準の「システム設定」から変えられます。Xfceも、パネルの構成や表示する項目を細かく変えられます。Cinnamonは、アプレット(パネルに置く小さな部品)やテーマで見た目を変えられ、設定画面もわかりやすくまとまっています。
GNOMEは標準の設定項目をあえて少なくしています。細かく変えるには、GNOME Tweaks(gnome-tweaks)や拡張機能を使います。拡張機能はGNOMEの公式サイト extensions.gnome.org で配布されていますが、GNOMEをアップグレードすると動かなくなるものがあります。
Wayland対応の状況
Waylandは、従来のX11に代わる画面表示の仕組みです。高DPI(高解像度)ディスプレイの拡大表示や、画面のちらつき防止で有利です。この分野は変化が速いので、ここでは執筆時点の状況を書きます。
GNOMEはWaylandへの移行が最も進んでいて、最近のバージョンではX11セッションを廃止する方向に動いています。KDE PlasmaはPlasma 6からWaylandが標準のセッションになりました。今後Wayland専用に移行する方針も示されています。Cinnamonは、Linux Mintで選べるWaylandセッションがまだ実験的な扱いです。Xfceは各部品のWayland対応が進んでいる途中で、ウィンドウ管理を担う部分はX11が前提です。一方で、古いNVIDIAドライバーや一部の画面共有ツールなど、X11のほうが安定する環境もまだあります。その場合は、X11で安定しているXfceやCinnamonが選びやすいという面もあります。
標準アプリの充実度
KDE Plasmaは、ファイルマネージャーのDolphin、端末のKonsole、テキストエディタのKate、PDFビューアのOkular、スクリーンショットのSpectacleなど、どれも機能が豊富です。GNOMEも、ファイル(Nautilus)、テキストエディター、ソフトウェア(アプリストア)などがそろっています。見た目の統一感が高い反面、機能は絞り気味です。
Xfceの標準アプリは、ファイルマネージャーのThunar、エディタのMousepad、画像ビューアのRistrettoなどの最小限です。足りない分は他のアプリを入れて補う前提です。CinnamonはLinux Mintが開発していて、Mintでは自前のアプリ群(X-Apps)やソフトウェアマネージャーが一緒に入ります。他のディストリビューションでCinnamonを入れた場合は、この組み合わせが同じとは限りません。
それぞれの弱点
GNOMEの弱点は、メモリ消費が多めなことと、操作の考え方が独特でWindowsの経験を生かしにくいことです。拡張機能に頼ってカスタマイズすると、アップグレードのたびに動作確認が必要になります。
KDE Plasmaの弱点は、設定項目が多すぎて、初心者はどこを触ればよいか迷いやすいことです。変更が頻繁なので、更新のあとで細かな不具合が出ることもあります。
Xfceの弱点は、見た目が素朴なことと、標準アプリが少ないことです。Wayland対応も4つの中では遅れています。高DPIディスプレイでは表示の調整に手間がかかる場合があります。
Cinnamonの弱点は、開発の中心がLinux Mintにあることです。他のディストリビューションでは扱いが一段下がることがあります。Waylandも実験段階です。
条件別の選び方
PCのスペックで選ぶ
メモリが4GB以下の古いPCなら、Xfceが現実的な選択です。8GB以上あれば、軽さ以外の観点で選んで構いません。
Windowsからの乗り換えで選ぶ
操作をなるべく変えたくないなら、Linux MintのCinnamon版が最も移りやすい組み合わせです。Windowsに近い操作のまま機能の多さも欲しいなら、KDE Plasmaが合います。新しい操作体系に慣れる意欲があるなら、GNOMEも候補に入ります。
設定をどこまで変えたいかで選ぶ
見た目や動きを徹底的に作り込みたいならKDE Plasmaです。軽さを保ったまま自分好みに組み立てたいならXfceです。標準のまま使い、設定にあまり時間をかけたくないなら、GNOMEかCinnamonが向いています。
決める前にやること
候補を2つに絞ったら、それぞれのライブUSB(インストールせずにUSBメモリから起動できる環境)で試すのが確実です。たとえばFedoraにはGNOME版とKDE Plasma版、Linux MintにはCinnamon版とXfce版があります。普段使うブラウザやアプリを開いた状態で free -h を確認し、30分ほど実際の作業をしてみてください。メモリに余裕があり、操作に迷わなかった方を選べば、大きく外すことはありません。