「どこでも同じ」が使えるものから揃える

Linuxをインストールした直後、まず悩むのが「何を入れればいいのか」です。ディストリビューション(以下ディストリ)ごとに標準アプリは違いますが、どのディストリでも配布されていて、乗り換えても同じように使えるアプリから揃えておくと、後で別のディストリに移っても環境を作り直す手間が減ります。

ここではその条件を満たす定番12本を、用途別に紹介します。特定ディストリに依存する注意点は、その都度明記します。

土台をつくる

1. Flatpak / Flathub

Flatpakは、ディストリを問わず同じ形式でアプリを配布・実行できる仕組みです(アプリごとに必要なライブラリを同梱するため、ディストリ側のパッケージが古くても新しい版を使えます)。配布サイトのFlathubを有効にしておくと、以降の11本の多くをここから入れられます。

Fedoraなど一部のディストリはFlatpakが最初から有効です。有効化されていない場合は、パッケージ管理から flatpak を導入し、Flathubを登録します。

flatpak remote-add --if-not-exists flathub https://dl.flathub.org/repo/flathub.flatpakrepo

なお、ディストリ標準のパッケージ管理(apt/dnf/pacmanなど)で入るものは、そちらのほうが起動が軽く容量も小さい傾向があります。基本は標準リポジトリ、無い物や新しい版が欲しい物はFlatpak、と使い分けるのが無難です。

日常づかいの5本

2. Firefox — Webブラウザ

多くのディストリに標準搭載されていますが、入っていなければ真っ先に。オープンソースで、プロファイル(ブックマークや設定一式)をアカウント同期で持ち運べます。公式はMozilla。Chrome系が好みならChromiumも同様にどのディストリでも入手できます。

3. Thunderbird — メールクライアント

同じくMozilla製のメールソフトで、カレンダー機能も統合されています。複数のメールアカウントをまとめたい人、ブラウザのタブを増やしたくない人に向きます。

4. LibreOffice — オフィススイート

文書・表計算・プレゼンが揃った定番。.docx.xlsx の読み書きにも対応しています(複雑なレイアウトは崩れることがあるため、相手に渡す最終版はPDF書き出しが安全です)。公式はLibreOffice

5. VLC media player — 動画・音声プレイヤー

コーデック(動画・音声の圧縮方式)を内蔵しており、追加設定なしでほとんどの動画ファイルを再生できます。ディストリによってはライセンスの都合で標準プレイヤーが一部形式を再生できないことがあり、その穴を埋めてくれる存在です。公式はVideoLAN

6. KeePassXC — パスワード管理

パスワードを暗号化した1つのファイル(データベース)にまとめて保管するアプリです。クラウドに預けたくない人向けで、ファイル自体は自分で好きな場所に置けます。ブラウザ拡張と連携すれば自動入力も可能。公式はKeePassXC

作る・編集する

7. GIMP — 画像編集

写真の補正、切り抜き、レイヤーを使った合成まで一通りこなせる画像編集ソフト。スクリーンショットの加工程度でも十分役に立ちます。公式はGIMP

8. Visual Studio Code — テキスト/コードエディタ

設定ファイルの編集からプログラミングまで幅広く使えます。Microsoft製バイナリにはテレメトリ(利用状況の送信)が含まれるため、気になる場合はビルド違いのVSCodiumという選択肢もあります。ターミナル内で完結させたい人はNeovimやmicroでも構いません。

ターミナルまわり

9. btop — システムモニター

CPU・メモリ・ディスク・プロセスを1画面で見られるターミナル用モニターです。マウス操作にも対応し、重いプロセスをその場で終了できます。古くからある htop でも同じ目的を果たせます。

10. tmux — ターミナル多重化

1つのターミナルを分割したり、接続が切れても処理を動かし続けたりできるツールです。SSHで別マシンに入って長時間の処理を回すとき、回線が切れても作業が消えません。tmux で開始、Ctrl+b のあと d で切り離し、tmux attach で復帰、という3つを覚えれば使い始められます。

データを守る

11. Timeshift — システムのスナップショット

システム全体の状態を定期的に記録し、不具合が起きたときに以前の状態へ戻せるツールです。rsync方式とBtrfs方式があり、後者はファイルシステムがBtrfsの場合のみ選べます。

注意点として、Timeshiftは初期設定でホームディレクトリ(個人ファイル)を対象外にしています。「システムを元に戻す道具」であって、写真や書類のバックアップとは別に考えてください。

12. Syncthing — 端末間のファイル同期

指定したフォルダを、自分のPCやスマートフォンの間で直接同期します。中央サーバーを持たないため、外部サービスにファイルを預けずに済むのが特長です。公式はSyncthing。1台しか端末がない場合は、外付けストレージへのバックアップを先に用意しましょう。

インストールコマンド早見表

パッケージ名はディストリやバージョンで異なる場合があります(執筆時点の一般的な名称です)。見つからないときは apt search / dnf search / pacman -Ss で検索してください。

アプリDebian/Ubuntu系Fedora系Arch系Flatpak ID
Firefoxfirefoxfirefoxfirefoxorg.mozilla.firefox
Thunderbirdthunderbirdthunderbirdthunderbirdorg.mozilla.Thunderbird
LibreOfficelibreofficelibreofficelibreoffice-freshorg.libreoffice.LibreOffice
VLCvlcvlcvlcorg.videolan.VLC
KeePassXCkeepassxckeepassxckeepassxcorg.keepassxc.KeePassXC
GIMPgimpgimpgimporg.gimp.GIMP
btopbtopbtopbtop
tmuxtmuxtmuxtmux

コマンドの形はそれぞれ次のとおりです。

sudo apt install vlc          # Debian / Ubuntu 系
sudo dnf install vlc          # Fedora 系
sudo pacman -S vlc            # Arch 系
flatpak install flathub org.videolan.VLC

次に検討したいもの

  • OBS Studio — 画面録画・配信
  • GParted — パーティション編集(操作を誤るとデータを失うため、扱いは慎重に)
  • qBittorrent — ISOイメージの入手などに使われるBitTorrentクライアント

おわりに

12本すべてを一度に入れる必要はありません。まずFlatpakの土台を整え、ブラウザ・オフィス・メディア・パスワード管理という日常の4分野を埋め、そのあとバックアップ手段を用意する——この順番で進めれば、どのディストリに移っても崩れない環境ができます。パッケージ名やUIは版によって変わるため、詰まったときは各プロジェクトの公式サイトを確認するのが確実です。